私は、労働者階級にいるほぼ全ての人が、全世界や先進国、米国を対象としたインデックス株式投資を行った方が良いと考えております。
インデックス株式投資ほど、長期的には勝つ可能性が高い勝負というのは世の中広しといえども少ないからです。よく、個人の置かれた環境や境遇や考え方により最適なポートフォリオは異なると言われ、私も一部は同意しますが、投資を行う人たちの共通の目的はトータルリターンをなるべく大きくすることに異論は無いでしょう。これを前提とすると、究極的(論理的)には全ての人が取るべき戦略は一意に定まるはずです。その戦略とは、トータルリターンを確率的に安定して高くするようなポートフォリオです。
現代ポートフォリオ理論の結論はインデックス投資
金融工学を駆使した現代ポートフォリオ理論において、様々な前提を置いた上で上記の命題の解となるのが市場ポートフォリオであるということが学術的に導かれております。それを実践する術が時価総額加重平均型のインデックス投資です。(現代ポートフォリオ理論の前提には当然種々の疑問がありますが、ここでは置いておきます)
しかし、本記事の冒頭でわざわざ「労働者階級」である人と限定したのには意味がありまして、金融工学のお墨付けを受けているインデックス株式投資といえども万能ではありません。このブログをお読みいただいている読者の方であれば誰もが知るところでしょうが、株式には大きな値動き(リスク=標準偏差)があります。値動きが大きいだけならまだ良いのですが、年単位で-50%にもなるような大暴落が極稀に起こります。
退職金などの老後資金を運用して生活費の充てにしている方の資産が突然半分になったとしたら、目も当てられません。プロスペクト理論を持ち出すまでもなく、多くの方は定常所得が無い状態で金融資産がどこまでも溶けていくというその恐怖心から狼狽売りしてしまうことでしょう。
これとて、持ち続けていればいずれ回復することが濃厚なのですが、残された人生の期間が短いと長期投資とも言ってられません。そこで、普通の人は債券を多めに入れたり、トービンの分離定理に則って現金比率でリスクマネジメントを行う必要があります。リスク資産はリターンの極大化が見込める株式インデックスとし、リスク資産の割合でリスクコントロールするということですね(もしくはオールウェザーポートフォリオやパーマネントポートフォリオなども有力ですが、いつかまとめたいと思います)。
以上のように、年齢によって定常インカムの不足と寿命という制約がありますが、長期投資が可能な労働者はみんなインデックス投資を行うべきと考えます。
市場平均は機関投資家達の努力の結晶の総体
投資と聞くと、丁半博打のようにお考えの人が少なくありません。投資家の中でも、少なからずギャンブルの要素を(本人が認めるかどうかは別にして)持ち込んでおります。
これは、日本人なら仕方がありません。ここ30年に渡って、日経平均は最高値を更新できておりません。また、ネット証券が台頭してきたのはここ数年であり、それ以前では海外株にローコストで投資(インデックス投資含む)を行うのは困難だったため、多くの人の投資対象は必然的に日本株になります。そのような地合いの悪い環境下で投資を行ってきた多くの人は、株式投資というものはみんなが儲かるものではなくパイの奪い合いであると錯覚します。
とはいえ、私も例外ではありません。資産の10%までと限定しておりますが、JTなどの高配当投資と優待株投資を行っており、残念ながらそのトータルリターンは現状、全世界株式インデックス投資に劣後しております。このように、私のような凡人は不合理な行動を取ってしまうのです(だから現代ポートフォリオ理論の結論が万人に支持されないのです)。
でも、本当にやるべきことは違うんですよね。トータルリターンの最大化を求めるならば、リスク資産を丸々インデックス株式投資にぶちこむのが合理的選択です。それでうまくいかなくても、それは確率的に低い不幸なシナリオが現実化してしまっただけであり、投資行動としては期待値の観点から最善手となります。
世の中には様々な投資手法がありますが、どれも結局は運で片付けられてしまいます。たとえ、ある投資手法で長期間うまくいっている人がいたとしても、それはその手法がたまたまうまくいく時期にその手法を選択していただけであり、運が良かっただけであるといえてしまいます。或いは、もしそのリターンに必然性があるとしても、普通ではない努力を長期間続けて初めて得られるリターンでしょう。
バリューもグロースもハイテクも高配当戦略も、うまくいった時期もあればうまくいかなかった時期もあります。そして、世界中であらゆる時期を取り出してみて、平均してうまくいき続けた方法というのはありません。もしもそんな手法があるなら、だれもがその手法を選択するでしょう。すると、その手法に関連する企業の株価は上昇します。その結果バブルが形成されて、投資家の過剰な期待に応えることはできなくなり、恐らく機関投資家が売り抜けることからやがてはじけて誰も見向きもしなくなります。嗚呼、無常…
市場参加者たちは日々凌ぎを削り続けております。その多くの資金はプロ中のプロである機関投資家達が、もっというと超一流大学で博士号を取ったような高IQホルダーたちが、大量のレポートを読み込み、最先端のテクノロジーを用いて大量のデータを処理して投資判断を下しております(現在はAiですが)。その彼らの努力の総体が市場価格です。これにタダ乗りできるのが、インデックス株式投資なのです。
インデックス株式投資は諦めることから始まる
もしかしたらどこかに、まだ誰も知らない最強のポートフォリオがあるかもしれません。あるいは、機関投資家達の総体である市場平均を出し抜き続けられる手法があるかもしれません。でも、それができるのは私ではありません。どっかの証券会社のレポートとかでも無いでしょう。彼らの予想はサルが適当に投げたダーツの結果とさほど変わらないことは歴史が証明しております。
短期的には個別株投資により市場平均をアウトパフォームできるかもしれません。でも、私が長期的にアウトパフォームできる確率は低いでしょう。それに、もし出来たとしても相当な努力が必要です。
もしかしたらテンバガーを見つけてソッコーでアーリーリタイアできるかもしれません。でも、凡人の私がその株を発掘出来てかつ大きくベットできる可能性は限りなくゼロに近いです。
株式インデックス投資は、諦めることからはじまります。
ソッコーでお金持ちになったり、市場平均をアウトパフォームし続けられるという考えを諦めることがスタートです。諦めることで、市場平均の凄さが理解できます。長期的には投資資産が年利5-7%で増えるというのはとんでもなく凄いことです。
私生活においてもなるべく確率的思考を持って行動している私としては、リターン×確率の総和として表される期待値が投資においては全てです。資産運用でギャンブルがやりたいわけでもなければアドレナリンを大量放出したいわけでもなく、長期的にトータルリターンを確率的になるべく高く上げたいだけです。
今後、もしかしたら株式インデックス投資で長期的に元本割れしてしまうかもしれません。たとえそうなったとしても、それは運が悪かっただけとして諦められます。きっと諦めて放置していたらやがて復活して最高値更新にチャレンジしはじめますしね。
諦めてもそこで試合終了とはならないのが、株式インデックス投資なのです。
以下の本は、インデックス投資本のレジェンド二人がタッグを組んだ珠玉の一冊です。本記事の内容に興味を持った方は、是非読んでみることをお勧めします。かなり読みやすいです。
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