投資市場を長期的スパンで観測すると、歴史が繰り返され続けていることがよくわかります。
株式市場では、好景気時には必ず行き過ぎたバブルが形成され、やがてそのバブルが崩壊すると、行き過ぎた悲観相場となります。
この特徴としては、どちらも「行き過ぎた」強気あるいは弱気相場となるという点です。
つまり、実体価値に対して過剰評価か過小評価をされるというのが市場の習性であるということです。
この現象は何に起因するのでしょうか?
そうです、投資家心理です。
つまり、人間の心理の習性がそのような短期的な大きな分散(ばらつき)をもたらしているのです。
人間(投資家)の不合理な心理からくる荒ぶるマーケット価格ではなく、実体経済(バリュー)に着目するべきであるということについて、名著「敗者のゲーム」にて記載されていたミスターマーケットとミスターバリューのたとえ話を交えて説明します。
ミスターマーケット
ミスターマーケットとは市場(マーケット)の値動きそのもののことです。マーケットの値動きは激しく、日夜様々な時事的情報に基づき絶えず上下動を繰り返しております。
ミスターマーケットはとても面白くユニークなキャラクターなので、人々の注目を集める人気者なのですが、精神的に不安定で感情的な行動をとりがちです。
有頂天になって大胆になったかと思いきや、お先真っ暗で絶望的な気分に浸ってしまうような、気分屋です。
その短期的な動きに規則性は見られず、ランダムウォークを行いながら、投資家を喜びの絶頂や悲嘆の底に導きます。
上昇相場では人々を誘惑することで更なる上昇を遂げ、悲観相場では投げ売りを誘発させることでさらに価格が落ち込みます。
このいたずら好きなミスターマーケットが人間の心理面を翻弄することにより、本来「ベリーイージー」な勝者のゲームである長期積立投資の難易度は、一気に敗者のゲームとなる「ハードレベル」にまで高まります。
特に、暴落相場において、市場の悲壮感にめげることなく損切りはおろか買い増しまで行うには、ミスターマーケットに翻弄されない鋼の心と長期積立投資という手法に対する強い納得感が不可欠です。
そこで登場するのが、ミスターバリューです。
インデックスファンドへの長期積立投資により巨万の富を築いてきた人たちは、このミスターバリューに着目し、株式市場の明るい未来に疑問を持たず、下落相場でもブレずに投資を続けてきた極一部の人たちなのです。
ミスターバリュー
さて、それではこのミスターバリューとはどのようなものなのでしょうか?
ミスターバリューとは、実体経済のことです。
従って、彼は感情や幻想には支配されずに、夜も休まずに財やサービスを生産しつづけ、それを分配します。
ミスターバリューはとてもおとなしく控えめであり、無視されることが多いキャラクターです。
ミスターマーケットのような派手さや面白さはないですが、ミスターバリューは地に足つけて経済そのものの実体を動かしているのです。
そして、価値を生み出し続けるミスターバリューは、その不断の生産性により、長期的には実体経済の規模向上を長期的にもたらし続けているのです。
表舞台であるミスターマーケットを裏で支える縁の下の力持ちというイメージですね。
アクティブファンド(ミスターマーケット)とインデックスファンド(ミスターバリュー)
アクティブファンドは、このミスターマーケットの動きの波を乗りこなそうとします。
自分は市場平均をアウトパフォームできるはずだと考え、短期的な売買も積み重ねながらミスターマーケットと戦い、翻弄されます。
アクティブファンドの行動そのものがミスターマーケットとなるため、残念ながらそれを超えるパフォーマンスを叩き出し続けるということは並大抵のことではありません。
一方、パッシブなインデックスファンドを用いた長期積立投資手法は、ミスターマーケットなど相手にはしておりません。
10年単位の長期的視点に立てば株式市場は年率5%以上で成長を遂げていくものであり、日々の価格の値動きなど市場のアヤにすぎないと、まるでマーケットを相手にしない凛とした態度で臨む投資手法です。
ここで注目しているのは実体経済に紐づく株式市場の長期的な価値(バリュー)です。
株式の購入とは、会社の保有権を購入することであり、株式のインデックスファンドの購入とは、そのインデックスに紐づく会社の保有権を一括して購入する行為です。
たとえば本ブログの推しインデックスであるS&P500への投資とは、米国株式市場の大型株約500社の保有権を所有することになります。
その中には、アップルやアマゾン、マイクロソフトやグーグル、インテルやIBM、FBなど押しも押されぬ世界最強の大企業が含まれます。
それらの会社に務める世界中の超優秀な人材が価値を生み出し世の中にその価値を提供することによって、各企業は対価として利益を得ます。
そして、株主であるあなたはその会社の所有者であるため、優秀な社員たちが働いて作り出した利益の一部を得る権利を持っております。
それが、配当金や、自社株買いによる株価UPなどで反映されます。配当金の一部は市場に再投資されるため、結果として市場に投資されるお金が増えることで、市場価値は成長します。
S&P500への投資では、米国大企業500社の所有権を少しずつ分散して所有するということになりますので、個別の会社の不祥事や倒産、時代の移り変わりによる産業構造の変換に伴う企業の栄枯盛衰という個別株リスクは低減されます。
このように、その時代の代表企業群が価値を生み出しては株主(市場)に還元するということが積み重ねられ続けて10年や20年が経った後に、市場のバリューは今のバリューよりも小さくなっていると考えられますか?
つまり、押しも押されぬ米国大企業群が長期間利益を上げることができずにくすぶり続け、社員にも給料を払えない日々が長期間続くという未来が想像できますか?
ミスターバリューに注目するということは、このように短期的値動きではなく、実体経済からもたらされる長期的な株式市場の規模の増加に着目することです。
突き詰めると、長期的な株式市場の規模繁栄を見込むということは、各社で働く社員たちが利益を生み出し続けるということ、社員たちが給料を得て生活を持続することが可能であること、究極的には資本主義が今後も続くということを見込むということに行きつきます。
そして、株式市場であるミスターマーケットは、日々縦横無尽に動きながらも長期的には右肩上がりの実体経済であるミスターバリューに拘束されるということが、過去200年の値動きからわかります。下図のStocksの赤線が米国株式市場のミスターバリュー、それを行き来する青い線がミスターマーケットというイメージです。
出典:AAII Journal
これが、ミスターバリューに着目したパッシブなインデックスファンドへの長期積立投資が最強であると私が信じる理由であり、更に言えば多くのインデックス投資家が信じた理由であり、複利の力で莫大な富を築き上げることができた所以でもあるのでしょう。
まとめ
あなたには、ミスターマーケットが注目を集めるその裏で、実直に生産と価値の提供を行い続けるミスターバリューが見えますか?
ミスターマーケットが絶えず人々を誘惑し、注目を集め、目くらましとなっていることにより、ほとんど見向きもされない実直で着実に成果を積み上げ続けるミスターバリューの存在が・・・
コメント