投資家の方であればPER(株価収益率)という言葉をご存知だと思います。
PERとは、投資先への投資額と同等のリターン(+100%)が得られると見込まれる期間(年)を指します。
さて、PERと言えば個別株を精査する際に使用する指標だと一般的には認識されていると思いますが、実は企業だけではなく各国のインデックスにも当てはめられます。
PERが低ければよいというものではないというのは個別株にてよく言われることですが、主要国家のインデックスであれば個別株ほどのリスクは無いと考えられます。
そこで、各国のPERを漁ってみたところ「これは!!」と思う国が浮上したので紹介します。
世界各国のPER
それでは早速ですが、世界各国のPERを見ていきましょう。(2019年9月)
地域・国 PER
(株価収益率)PBR
(株価純資産倍率)配当利回り 時価総額 全世界 16.6 2.3 2.51% 47兆ドル 先進国 17.1 2.4 2.45% 42.2兆ドル エマージング国 13.4 1.7 3.04% 4.9兆ドル ヨーロッパ 14.7 1.8 3.51% 8.9兆ドル アジア・パシフィック 12.2 1.3 2.91% 6.2兆ドル BRICs 12.6 1.7 2.57% 2.9兆ドル 日本 12.1 1.2 2.48% 3.7兆ドル 米国 20.3 3.5 1.93% 25.7兆ドル 英国 14.5 1.8 4.43% 2.4兆ドル オーストラリア 16.7 2.1 4.16% 1.1兆ドル オーストリア 8.5 1.1 3.84% 312億ドル ベルギー 19.8 2.1 2.8% 1522億ドル カナダ 16.1 2 3.22% 1.3兆ドル デンマーク 17.3 3.7 2.08% 2441億ドル フィンランド 15.4 1.9 4.83% 1719億ドル フランス 16.4 1.8 3.19% 1.5兆ドル ドイツ 12 1.6 3.12% 1.2兆ドル ギリシャ 16.7 0.9 2.91% 171億ドル 香港 12.2 1.2 3.26% 5336億ドル アイルランド 15.2 1.7 1.65% 328億ドル イタリア 10.2 1.2 4.09% 3616億ドル オランダ 16 2.3 2.86% 5318億ドル ニュージーランド 23.8 2.7 3.93% 429億ドル ノルウェー 14.1 1.7 4.11% 1005億ドル ポルトガル 15.4 2 4.24% 223億ドル シンガポール 13.6 1.2 4.41% 1895億ドル スペイン 10.7 1.2 3.8% 4051億ドル スウェーデン 20.3 2.3 2.99% 3661億ドル スイス 18.9 2.8 2.91% 1.3兆ドル 中国 13.7 1.6 2.23% 1.7兆ドル インド 21.6 2.7 1.43% 5326億ドル ブラジル 14.6 2.2 2.85% 4290億ドル ロシア 4.3 0.7 7.55% 2163億ドル チリ 14.7 1.6 3.4% 531億ドル コロンビア 11.9 1.3 4.09% 240億ドル チェコ 12.2 1.4 6.09% 80億ドル エジプト 10.6 2.4 3.15% 99億ドル ハンガリー 9.7 1.5 2.29% 163億ドル インドネシア 16.7 2.6 2.87% 1068億ドル イスラエル 19.2 1.2 3.63% 727億ドル マレーシア 18.3 1.6 3.47% 1320億ドル メキシコ 13.5 2 3.28% 1450億ドル パキスタン 7.4 1.1 6.82% 19億ドル ペルー マイナス 1.4 0.79% 32億ドル フィリピン 18.7 2.2 1.83% 643億ドル ポーランド 11.2 1.3 3.64% 462億ドル 南アフリカ 13.9 1.9 3.55% 2771億ドル 韓国 8.2 0.9 2.47% 6466億ドル 台湾 14.4 1.8 4.27% 6109億ドル タイ 15.2 2 3.03% 1767億ドル トルコ 7.2 1.2 4.93% 356億ドル 出典:myINDEX
それでは、黄金銘柄ならぬ黄金の国(カントリー・
ここで、PERのスクリーニング条件としては以下を設定します。
PERが10以下であれば、10年以内に二倍を超える結果が期待できます。
さて、PERが10以下である国のリストは以下です。
該当国多すぎ!!ということで、次はPBR(株価純資産倍率)にてスクリーニング条件を設定します。
PBRが1.0以下であれば、本来市場が持っている価値に対して株価指数が過小評価されていると言え、市場が正当に評価されれば指数の回復が見込めます。
PBRについて詳しく知りたい方は、例のわかりやすいマンガシリーズをお読みください↓。
投資入門者に最初に知っておいてほしいこと その11 PBR(株価純資産倍率)
PBRが1.0以下の国を以下にリスト化します。
さて、これら二つの条件を満たす黄金の国はどこでしょうか。
韓国とロシアの二か国が該当しましたが、韓国に比べてロシアの方が圧倒的に好条件なので、現代の黄金の国(カントリー・
※日本はPERが12.1、PBRが1.2とそこそこ好条件であり、政府と日銀、年金機構による濡れ手に粟の禁断の錬金術「財政ファイナンス」とも見受けられる日本株式ETFの買い支えが今後も見込めるため、中期的には上昇が見込めると考えてます。しかし、日本の国力自体は残念ながら衰退の一途を辿ると個人的に思いますので、長期的視点からはあまり投資したいとは現状考えておりません。
ロシアの株式インデックスの優位性
さて、それではロシアの株式インデックスを見てみましょう。多くの投資家には馴染みの無いインデックスだと思いますが、MSCI ロシアというものがあります。
MSCIと聞くだけで安心感がありますね(MSCIコクサイにはいつもお世話になってます)。
このMSCI ロシアのトータルリターンの長期パフォーマンスはというと、さすが「黄金の国ロシアング」なだけあって、以下のようにまずまずのパフォーマンスを示しております。
出典:わたしのインデックス
MSCIロシアの潜在能力はわかったので、インデックスファンドをみてみましょう。
ETFで有名なBlack Rock社が提供するiシェアーズ MSCI ロシアETF というものがあります。
ファンドの詳細は以下となります。
出典:BlackRock
保有銘柄数は26社と少ないですが、とはいえ20社を超えていれば最低限の分散は効いていると言えます。経費率は0.59%であり、バンガード社の各種ETFと比べると不満はありますが、それでもパフォーマンスや個別銘柄へのアクセス性を考えると悪くはない水準です。
また、PER、PBR共に前項で見た値よりも悪化しておりますが、これは銘柄数と選定銘柄が異なるためでしょう。とはいえ、基準となるPER10以下、PBR1.0以下は満たしております。
ETFの値動きはというと、ここ10年間の新興国の典型的な値動きであり、あまり芳しくありませんね。キャピタルゲインはイマイチですが配当が多く出るため、先述のパフォーマンスとなっているのでしょう。
出典:BlackRock
ロシアの強みと地政学リスク
ここまでの考察で、21世紀の黄金の国はロシアかもしれないということがわかりました。
ロシアは、国家としては大きなポテンシャルを秘めていると思いますが、ご存知の通り地政学リスクがあります。
強みとしては、資源大国であり、科学技術への投資も惜しまないところがあります。
また、プーチン大統領はAI強力推進派であり、2017年には「AIを制する者が世界を制す」と発言しました。更に、2019年10月には、2030年にはAIを人間と同等の知能にまで成長させることを目指すと宣言し、AI積極推進の姿勢を改めて強調しました。
中国もそうなのですが、このようなほぼ独裁政権の共産主義的な国家では、最高権力者の意思決定が国家の意思決定となります。どちらの国もAI開発を猛烈に推進しており、この戦略がハマれば米国を中心とした一極集中のグローバリゼーションの転覆もありえるかもしれません。
とはいえ、事実上の独裁者が舵取りを間違えた場合のリスクも当然存在します。また、私は米ソ冷戦が水面下では依然続いていると思っておりまして、この決着次第では敗戦国としての辛酸を舐め続ける可能性もあるでしょう。
このような地政学リスクが大きいことが、ロシアを低PER、低PBR国家とさせているのかもしれませんね。
まとめ
PERとPBRの簡単なスクリーニングの結果、現代の「黄金の国」の最右翼はロシアだということがわかりました。
本分析を通して色々と学ぶことや考えることがあり、世界の現状を把握するために良い勉強となりました。
末筆となりますが、注意点としてPERとPBRが低いことが未来の高いリターンを保証するものではありません。また、言うまでもないことですが、投資を行う際はリスクを十分考慮した上で、自己責任でお願いします。
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