資本主義の本質、それは否が応でも広がり続けていく格差です。
現在、世界のお金持ちトップ26人の総資産額が、世界中の下半分の人口約38億人の総資産額と同等となっております。大金持ち一人当たりが、1億人以上分の資産額を保有している計算になります。
えぐすぎないですか!?
少し賢い小学生なら気づいているようなことですが、世の中は生まれながらにして平等ではありません。しかし、資本主義社会には平等なことが一つあります。それは「機会の平等」です。
ここでいう機会には投資機会を含みます。
つまり、投資を行いたければ投資を行える機会が平等に開かれているということです。
この投資機会にアクセスできるのは運良く先進国に住んでいる我々の特権です。
なぜなら、この投資を行うか否かが格差の上側に行くか下側に行くかを分ける分水嶺となり得るからです。
ピケティの不等式「r > g」が示す格差拡大の必然性
フランスの気鋭の経済学者トマ・ピケティ氏が『21世紀の資本』にて示した最重要事実として、r > gというものがあります。(詳しくは以下の記事に譲ります。)
ここで、rは「資本収益率」というものであり、これは投資によるリターンの平均値を指します。一方で、gは「経済成長率」のことであり、これは労働による価値の増加率、即ち「所得の増加率」と均衡します。
トマ・ピケティは、古代から現代までの長い歴史の中で世界的にみてこの方程式が基本的には不変であり、一般的にはrが5%であるのに対してgは1~2%であったことを示しました。
つまり、労働のみによる価値の増加を期待する労働者階級の富に対して、金融資本による投資が富を生むフェーズにある資本家(富裕層)の富の増加率の方が年率3~4%高いため、格差はこのペースで時間と共にどんどん拡大していくということが白日の下にさらされたのです。(ちなみに格差是正に最も寄与する事象は戦争です)
では、この残酷な格差社会に生きる我々にできることには何があるのでしょうか?
そうです、株式投資です。
株式投資家と貯金家との間に広がる格差の試算
さて、それでは株式投資を選択した人と貯金一辺倒な人との格差拡大スピードを試算してみましょう。
ここで、株式投資の対象は最も効率的な市場である米国とします。すると、過去200年の米国株式市場の実質リターンは6.7%でしたので、r=6.7%(実質リターン)とおきます。
一方、世界の経済成長率は平均で1~2%程度とのことですので、多めに見積もってg=2%(経済成長率=給料増加率)とおきます。
更に、日本でのインフレ率を1%とします。
資産の設定としては、初年度の年収が500万円であり、銀行預金は無く、年間100万円の余剰資産を生み出す家計とします。二年目以降は経済成長率分だけ年収が上がり、余剰資金もその分増加するが、生活コストもインフレ分増加することとします(税収増加は未考慮)。投資家の場合はこの余剰資産を米国株式市場に投資し、そうでない場合は銀行口座に預金するとします。
それでは資産額の推移のシミュレーション結果を見てみましょう。
上図で、青線が投資家の資産額の推移、赤線が余剰資金を貯金する人(貯金家とここでは呼びます)の資産額の推移です。
実際は米国株式市場は乱高下しますので青線はこのようになだらかな推移とはなりませんが、実質平均リターンが今後も過去200年と同等であると仮定すると、この青いラインを行ったり来たりしながら資産額が推移していくことが予想されます。
5年毎の資産の推移を以下に表で示します。
投資家資産 | 貯金家資産 | |
5年後 | 633 | 505 |
10年後 | 1575 | 1038 |
15年後 | 2950 | 1603 |
20年後 | 4932 | 2205 |
25年後 | 7762 | 2847 |
30年後 | 11773 | 3536 |
35年後 | 17429 | 4278 |
40年後 | 25371 | 5079 |
(単位:万円)
最初の5年では大した差ではありませんが、10年、20年と時が経つにつれてどんどん差が広がっていく様子がわかります。そして、30年や40年後にはとても埋め合わせできないような劇的な差が形成されます。これが複利のバカヂカラです。
最後に、資産格差の拡大推移をパーセンテージで表してみます。たとえば資産格差が100%の場合、投資家は貯金家の資産+100%、つまり二倍の資産額を保有するということです。
10年後には50%であった格差が、20年後には125%、30年後には233%、40年後には400%と倍々ゲームで加速していく様子がグラフから見て取れます。
これが、ピケティの示した不等式「r > g」を個人レベルで活用した場合の効果です。
念を押しておきますが、ここでの投資家と貯金家の年収、生活コスト、年あたりの余剰資金は同じです。つまり、同じ人間でも考え方と行動が違えば数十年後には圧倒的な資産格差が生まれ得るということの証左です。
まとめ
ピケティが示した格差拡大の不等式「r > g」を個人が利用する方法と、それによる格差の拡大速度について現実的な条件におけるシミュレーションを用いて示しました。
資本主義の本質、それは搾取に基づく格差の拡大です。
何故格差が拡大するか?その理由は種々あると思いますが、私の現時点での回答を一文で示すと、「株式会社は利益を生み出すマシーン(搾取装置)であり、その所有権は株主にあるため」だと思います。
労働階級に位置するサラリーマンは多くの時間と労力、即ち人生の大部分を株式会社に捧げておりますが、その目的は利益製造マシーンである株式会社の利益を可能な限り拡大することです。そして、その利益は本来は株式会社の所有者である株主のものとなります。
つまり、我々労働者は株主(資本家)が利益を得るための「歯車」とも見ることができます。その「歯車」が生活を維持でき、働き続けてくれるように、株式会社の所有者である株主は「歯車」に会社の利益の一部をおすそ分けしているという搾取の構図にもみることができます。
これは「支配階級」による「労働者階級」に対する搾取の構図とも換言できます。そして、これは見方によっては現代の奴隷制度にも見えてくるのです。
しかし、悲嘆にくれていても何も始まりません。幸いにも先進国に住んでいる我々は証券会社を通じて世界中の利益製造マシーンにアクセスすることができるため、この支配階級側のおこぼれに預かることができるのです。
短期的な株価の乱高下だのリセッションだのといったものは、利益製造マシーンの所有権を安く買えるか高く買えるかの違いでしかありません。本質的には株式会社の所有権を手にしたらそれを超長期保有することで利益を得続けることが解なのです。
あなたは労働階級であり続けますか?それとも、支配階級への道を選びますか?
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