お金の永久機関、マネーマシン。
いい言葉ですね。「お金を永遠に生み続ける装置」という意味ですから、そんなものが存在するのであれば誰もが貯金を全て投げ出してでも欲しがるものでしょう。
しかし、実際はどうでしょうか?マネーマシンだと思って買った高配当株は減配するかもしれませんし、かといってインデックス投資でも暴落することがあるためマネーマシンとは言い難いです。
と思ったらそれは間違いです!インデックス投資であればメンテナンス不要でほぼ確実に半永久的にマネーマシンとして機能します。
でも、インデックスファンドは配当が少ないからどうせマネーマシンとしてのリターンも少ないんでしょ?と思われた方のために先に結論を述べておくと、ポートフォリオにもよりますが概ね保有資産額の3.5%(手取り3%)であれば、高い確率で元本を棄損することなく毎年自由に使えるお金となります。これは、配当利回り4.2%の高配当米国株式ETFに相当します。
インデックス投資家も永久機関を持ってる!
高配当株式の人気は、文字通り配当利回りが高いことに起因します。配当金戦略には一理ありますので批判するつもりは無いですが、高配当戦略が人気な理由の一つには「配当=元本は維持したまま支給される自由に使ってもよいお金」という誤解があると思います。
実際はというと、配当落ちが示すように、配当が株主に還元された分だけ株価は安くなるのが常です。従って、配当金とは、事業に悪影響をもたらさない程度に企業が株主に資産を自動的に取り崩してくれるものであり、高配当戦略とは株主還元意識が高い企業、或いは高配当を維持できる高収益ビジネスを営む企業への積極投資戦略となります。
上記から、出口戦略において、配当金は受動的取り崩しであり、インデックスファンドは能動的取り崩しとなります。つまり、やっていることは同じで、取り崩す主体が企業側か、株主側かという違いぐらいなものです。
ここから導かれる結論は、インデックスファンドも配当戦略同様にマネーマシンとして機能するということです。当たり前ですよね?
さて、それではインデックスファンドのマネーマシンの性能はどの程度のモノなのでしょうか?これについては米国にてトリニティスタディと呼ばれる詳細な研究が重ねられておりますので、米国での実績ベースでの結論となりますが、インデックスファンドは年間3.5%なら安心して取り崩してOKとなります。
インデックスファンドを永久機関と見なす条件
ここで幾つか条件があります。
一つ目は、米国での調査結果ですので米国株式をメインとすることです。具体的に最もよいであろうポートフォリオは米国株:米国債券=75:25です。全世界株や日本株でも同様の戦略は取れますが、パフォーマンスの広範な評価結果を私は知りませんので何とも言えません。
二つ目は、米国株:米国債券=75:25で3.5%取り崩し条件であっても相当運が悪い場合には、過去の実績上取り崩し開始後40年以降には資産が尽きることもあるということです。過去140年程度の上記の条件での資産生存確率の実績は、40年後なら100%、50年後に99%、60年後に97%です。また、元本保持確率は30年後に84%、60年後に93%となります。つまり、十中八九元本は維持されますが、十中一二は元本を割り、数%の確率で生きているうちに破産します。ちなみに、60年後に元本の半分を下回る確率は5%でした。
三つ目は、インデックスファンドの運用コストと、取り崩し時に利益にかかる税金込みで3.5%までとなります。これらのコストは概ね0.5%程度が標準的と考えられるので、手取りで見ると年率3%の取り崩しが可能となります。ネットを見てると多くの人が見落としているのでこの点注意が必要です。
四つ目は、取り崩し条件としては、取り崩し初年度の額にインフレ分を毎年追加していく実質ベースでの評価であり、また全てドル建てでの結果です。従って、日本で同様のことを行うとなると、厳密には為替の影響とインフレ率の差分を考慮に入れる必要があります。とはいえ実質ベースでの闘いですから、為替は長期で見たらあんまり関係ないと思われます。
聡明な本ブログの読者諸兄であれば、「あれ、いつもの宝の地図では米国株のインフレ率調整後(つまり名目リターンからインフレ率を引いた後)の幾何平均実質トータルリターンが6.7%だったのになんで3.5%までしか取り崩し出来ないの?」と疑問が生じる方もおられると思います。
毎年6.7%の実質トータルリターンを定常的に得られるのであれば、毎年6.7%の実質ベースでの取り崩しを行っても元本は棄損しないはずです。しかし、現実には残念ながらそうはならず、ここにはボラティリティのマジックが隠されております。
例えば米株(S&P500)を1億円分持った状態で、税金・コスト込みで毎年350万円分の取り崩しを開始する場合、翌年株価が暴落して8000万円の資産となったとします。インフレ率ゼロと仮定すると、ここで二年目も350万円分を取り崩す必要があります。資産8000万円に対して350万円は0.4375%です。
過去の資産の履歴は関係ないので、ここから取り崩しを始めたと考え直すと、4.375%取り崩しルールが敢行されていることになるのです!ここから景気後退が数年単位で続くことになると、元本はみるみる棄損されていきます。数年間に渡る下落相場をようやく凌いだ時に残りの資産が5000万円だとすると、350万円の取り崩し率は何パーセントでしょうか?
7%です!!無慈悲の咆哮がコダマします・・・
ということで、株式の特徴であるこの大きなボラティリティの悪影響を抑えるために、実質トータルリターンが大きく劣るが株と負の相関を持つ債券を混ぜた方がテールリスクがヘッジされる分、資産の永続性は若干高まります。が、債券が増えれば増えるほど幾何平均トータルリターンは下がりますので、その最適解を探究したところ株式75%、債券25%だったということです。
精神的にも株100%よりは債券25%含まれている方が安心できるでしょうから、リターンの期待値は下がりますが私は取り崩し期には債券を入れようと現状は考えております。ただし、十分な資産があり、かつリスク許容度が高い人であれば株式100%も有りだとは思います。
インデックスファンドのマネーマシンの規模について
さて、それでは現在あなたが保有する株式インデックスファンドの規模から、マネーマシンによるおカネの鋳造性を計算してみましょう。(中央銀行の機能の一部を手中におさめた気分で!)
ご自身が保有しているインデックスファンドの時価に0.03を掛けてみてください。それが、今から取り崩し始めても生きている間に枯渇することは十中八九無いであろう、サステイナブルなインデックスマネーマシンのマネーメイキングレイトです!グレイト!!
と、これだけ書いても芸が無いので、この大きさがどれほどのモノなのか、他の手法と比較してみましょう。
例えば、米国の高配当ETFであるSPYDは、2020年11月現在の配当利回りが3.24%です(ここまで低いのは今だけかもしれませんが)。米国株の場合はここから米国・日本それぞれから税金が計28%引かれますので、手取りだと約2.3%となります。現状はインデックスファンドの大勝利ですね。(確定申告で米国分の税金を取り返した場合は別ですが)
では、逆に米国ETFの場合にどれぐらいの配当利回りであれば、手取り3%となるのでしょうか?
その答えは、約4.2%です!4.2%といったら、高配当ETFでの配当利回りの目標値がこれぐらいでしょうか?また、個別株で高配当戦略を取っている人でも中々到達が難しい水準だと推察します。メンテナンスも大変だと思われます。これぐらいのインパクトがインデックス取り崩し戦略にはあるということですね。
ちなみに日本株で考えると、国内課税20%のみとなるので手取り3%に対応する配当利回りは3.75%です。インデックスマネーマシンの効率性はなかなか侮れないということがご理解いただければ幸いです。
まとめ
インデックスファンドを用いた投資であれば、3.5%までなら取り崩しても十中八九死ぬまで生存可能であり、これは米国高配当株ETFなら配当利回り4.2%、日本株なら3.75%に匹敵することについて説明しました。
なお、この結論は歴史上リターンが優れない不遇の時期を念頭に置いた結果です。それもそのはず、過去200年間の米国株式市場のインフレ率調整後の実質幾何平均トータルリターンは6.5~7%です。
従って、3.5%取り崩しルール(手取りだと3%)を敢行した場合、多くのケースでは元本は増え続けます。
では、どれぐらい増えるでしょうか?実質ベースでの30年後の中央値は、3%取り崩し条件だと中央値が約8.5倍、4%取り崩し条件だと約6倍です!(米国株式:米国債券=75:25の場合)
従って、3.5%ルールであれば、7倍ぐらいが中央値(上から数えても下から数えても真ん中のケース)として見込めるんじゃないですかね?つまり、3.5%ルールは結構保守的な評価と言えます。独身の方や、子に資産を残さなくても良いという方は4%ルールでも問題ないでしょう。
4%ルールについては資産生存期間や元本保持の有無、インフレ調整の有無や定率法・定額法など、前提条件次第で大きく変わるものです。
それゆえに誤解が多く、また名前にインパクトがあることも手伝って適当なことを言う人が多すぎるので、正しい情報が世の中に広がって定着していけばいいなと弱小ブロガーは日々思うのでした。(ブログで何度も取り上げているのはそれほどにも超重要情報だと思っているからです)
まぁ、たとえそうなっても私は1円も得しないのですが、正しい情報を元に建設的な議論が行われるようになれば、そこから日本での正しい取り崩し方法など派生的な手法が確立されてくるでしょうし、間違った情報による犠牲者も減るでしょうから、より健全な投資土壌が築けていいなぁと夢想します。
ちなみに、投資対象は全世界となりますが、ここで紹介した株式・債券比率に近い70:30で自動的にリバランスしてくれる超優良ファンドを以下の記事で紹介しております。経費率が0.24%とほんのちょっとだけ高いですが、これ一本で資産運用して手取り3%ルールで生活できるようになったら取り崩しを開始するというのも優れた手法だと個人的には思います。
インデックス投資による出口戦略シリーズは以下です。全部読んで理解したら、インデックス取り崩し戦略については偏差値70が取れますよ👍(あと足りないところは節税スキームの構築ぐらいですが、長らく宿題となってます)
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