投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットが妻に伝えたと言われるあまりにも有名な言葉に、「私の死後は資産の90%をS&P500に投資し、残り10%を米国短期債に投資せよ」というものがあります。
投資の神様が篤く信頼を寄せている米国大型株約500社により構成されるS&P500ですが、以下の通称「宝の地図」を見るとわかるように、過去200年間を大局的に見たらひたすら片対数グラフ上で右肩上がりに推移しており、その実質幾何平均リターンは6.5-6.7%という超絶ハイスコアを叩き出しております。
出典:AAII Journal
これらの事実から、長期投資をするならS&P500だ!と結論付けたくなるのはご尤もなのですが、しかし投資をこれから始めようという若い方は特に大金を持ち合わせておりませんから月々の給料から得られた余剰資金をドルコスト平均法的に投資していくことになります。
このような積立インベスターにとっての関心事は上の宝の地図に示した一括投資時のリターン推移ではなく、ドルコスト平均法で20年間積み立てた場合の投資元本に対するリターンがこれまでどうであったかということでしょう。
ということをずっと気になっていたのですがめんどくさいので評価せずにいたところ、先日「ワーイ ハポネッサ」でおなじみの厚切りジェイソン氏がYouTubeで次のようなコメントをしておりました。
「(S&P500に)分散して長期的にずっと毎月同じような金額を入れ続けると、過去のデータを全部分析して20年期間で考えると、(利回りが)6%以下になったことはなかったんです。」
ワッツアビューティフォーアメリカンユーアー!!
ということで、これが事実であるかどうかを検証してみました。結論としては、全くもって発言とは異なる哀しい結果となりましたが、一方で最悪を想定してもそこそこプラスリターンであることがわかったのは朗報でした。(なぜ司会進行役がこの発言について掘り下げなかったのか疑問しかありません)
S&P500に20年間積み立てた場合のリターン推移
さて、それでは気を取り直してデータを見ていきましょう。引用したデータは、我らがウォーレンバフェット氏率いるバークシャーハサウェイのHPに毎年掲載されている株主への手紙2019年からです。この手紙には、これまでのS&P500とバークシャーハサウェイ株とのトータルリターン(名目ドル建て)の推移について毎年冒頭で書かれておりまして、今回引用したデータは1965-2019年までのものとなります。
それではお待ちかねの、リターン推移図を示します。
図において、横軸は積立を開始した年を表し、縦軸は名目での20年後の幾何平均トータルリターン(配当込み)となります。
20年間に渡って毎年年初に一定額を投資する想定です。なお、配当に対する税金や信託報酬等のコストは無しで計算してます。
リターンの求め方は、20年後の運用資産を投資総元本で割って、それの20乗根を取ることにより求めました。
つまり、20年間積み立てなので投資資金の平均市場エクスポージャー期間は約10年なのですが、総元本を仮に初年度に一括投資したとみなした場合の20年間の幾何平均リターンを求めてます。
これは、投資元本の身になってみたら非常にかわいそうな扱いなのですが、それでも上図のように最低でも年利3%の名目リターンを勝ち得たというのは、わりと優秀だと思います。投資総元本に対して最低でも20年後に1.8倍ですからね。ちなみに平均値は6.8%というリターンでした。
しかし、厚切りジェイソン氏の言う最低6%という発言にはほど遠い結果となりました。
S&P500に一括投資して20年後のリターン推移
となれば次に気になるのは、一括投資して20年放置した場合のリターン推移はどうなるの?ということでしょう。ということで、シミュレーションしてみました。
積立ケースに比べて明らかにハイアベレージですね!この期間での最低となった幾何平均リターンは、ITバブルが弾ける直前の1999年に一括投資した場合で5.6%でした。厚切り氏はこの一括投資の場合のちょっと古いデータを見て年間リターンは6%以上と言ったのかもしれません。ちなみに、この期間の平均値は8.2%でした。
なお、これだけみるとS&P500を一括投資しとけば勝ちじゃんと思いますが、先の宝の地図によると、世界大恐慌直前にS&P500に一括投資した場合は、その後17年間もの間実質リターンはゼロ以下となったという恐ろしい事実があります。積立ケースの場合にどうなるのか興味深いですが、残念ながら評価に必要なデータがございません。もしもS&P500の超長期の配当込みトータルリターンの推移データの在り処をご存知の方がおられたら、下の方のコメント欄等でご教示いただければ幸いです。
まとめ
厚切りジェイソン氏の分厚い切り口のコメントに刺激され、積立投資の20年後のパフォーマンスについてS&P500のドル建て名目リターンを評価してみました。
結論としては、
WHY AMERICAN PEOPLE!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
これです。
とはいえ、長年の疑問が解消されましたし、やってよかったとは思います。せっかくなので、積立と一括の20年後の幾何平均名目リターンの比較を以下に示しておきます。
青線が積立、一括がオレンジとなります。この期間においてという条件付きではありますが、一括の圧勝でございます。
気になるのが、近年のリターンの低さですね。まぁ、インフレ率や金利が減っている分、名目での評価は低くなるのでその影響ということにしておきますかね(適当)。
コメント
その間のアメリカのインフレ率を考えると、実質ベースでは1%位のIRRになりませんか。また、1970年~1990年頃はドル円は200円~150円だったので、日本人目線ですが円をドルに換えてからの投資開始とすると円ベースではマイナスリターンになっていませんか。
そうかもしれないですね!
いつも参考になる記事をありがとうございます。
以下のサイトなんかは、SP500について長期で色々と計算できるようで便利そうです。
ご参考まで。
https://dqydj.com/sp-500-return-calculator/
これは!!
貴重な情報をありがとうございます!年毎のリターンを抽出できるか試してみようと思います