日本は30年前の全盛期と比べたら落ちぶれたとはいえまだまだ先進国であり、国としては豊かな部類に入ります。また、日本人は非常に勤勉な国民性であるため、世界で一番長時間労働を行っております。
日本のサラリーマンは世界(主要先進国)でいちばん仕事が嫌いで会社を憎んでいるが、世界でいちばん長時間労働をしており、それにもかかわらず世界でいちばん労働生産性が低い
– 橘玲『上級国民 下級国民』
— ニューロンズ💰理系の錬金術師 (@Singularitalian) 2019年8月24日
それにも関わらず日本人の生活は豊かとは言えず、長期休暇でバカンスが当たり前である他の先進国に比べると金銭的・時間的な余裕度でも生活満足度でも大きな差があります。
なぜ、同じ先進国なのにこのような大きな差があるのでしょうか?
日本人の生活がなかなか豊かにならない理由の一つは、住宅の寿命が短いことだと私は考えます。
そして、このことが意外にもブラック企業の蔓延に大きく関係していると思うのです。
本記事ではこの仮説について説明します。
日本の住宅寿命は欧米の先進国の半分以下
映画「ハリーポッター」や「世界ふしぎ発見」のTV放送などを思い返してみると、先進国の中でも特に欧州の建築物は立派かつ長寿命であるというイメージがありますよね。
メンテナンスされながら何世代にも渡って大事に住まれてきたような、築100年や200年という邸宅が至る所にあるそうです。
一方で、家族を持つ日本のサラリーマンの多くは、20代後半から30代あたりで30年から35年程度の長期ローンを組んで家を建てます。
このことからも分かる通り、日本での家の役割は家族一代のみが住むように計画されて作られております。現に、日本の住宅の寿命は約26年とのことです。
それでは、欧州、米国、日本とでどの程度住宅寿命が違うのか見てみましょう。
調査方法や調査時期によって結果は異なりますのであくまで目安ですが、米国は日本の二倍、英国は三倍の住宅寿命となっております!!
鋭い方はお気づきだと思いますが、このことは生活面での国民の豊かさに直結します。何故なら、生活費の中で最も大きなシェアを占める住宅費(家賃)に大きな差が出るからです。
欧米では、二代目や三代目でも親と同じ家に住むことが出来るため、世代を超えて親や先祖に住宅費を肩代わりしてもらえるのに対し、日本では賃貸であっても毎月高い家賃を払わなければならず、持ち家を建てる場合は云千万円という負債を背負うことになるのです。
同一収入で比較した場合、住宅の寿命の差により生活の豊かさに差が出るのは自明ですね。
ブラック企業蔓延の原因の一端は住宅寿命の短さにある
住宅寿命が短いのに加えて国土面積が狭く土地代が高いため、日本では衣食住の「住」にかかる費用が欧米と比べると高い状況です。このことが最低限必要な生活費を底上げしております。
従って、30年以上のローンを組んで高い持ち家を購入したサラリーマンは、そのローンを返すために働き続けなければなりません。
ローンには当然利息がついております。近年ではフラット35等により年利1%台の低金利で住宅ローンを組めますが、それでもローンが4000万円だとするとその1%は40万円です。つまり、ただでさえバカ高い住宅代にプラスして初年度は利息40万円を支払う必要があります。
このことが、より一層家計を圧迫します。
更に、近年では社会保障費が上がり続けているため一昔前と同じ総所得であっても可処分所得は削減されております。このことにより、働けど働けど余裕のある生活は営みにくい状況です。余剰資金の投資により資本家への道を歩くということも、当然困難となります。
住宅ローンという重い借金を背負ったサラリーマンの多くは残業代を稼ぐために労働にオールインします。これは、会社を経営する側から見れば極めて好都合です。何故なら、多額のローンを背負ったサラリーマンたちは、そのローンを返済するまでは働き続けなければならないため、簡単には仕事を辞めないからです。
ひと昔前までは終身雇用が当たり前であったため、転職市場が未成熟であることも追い風ですね。このことから、労働者と雇用者との関係性は対等であるはずがなく、雇用者側が弱みを握っているような条件であるため、労働者を奴隷のようにこきつかうことができるのです。
また、たとえ住宅ローンを負っておらず、かつ生活費も抑えていて資産がそれなりにある人でも、上司が上記の奴隷状態であれば同水準の労働を要求されます。たとえ上司がそうでなくても、さらに上の上司が、或いは関係者が、取引先が、、、という感じで組織は繋がっているため、個人ではどうにもできない同調圧力が形成されているのです。このことにより、ブラック企業が蔓延しているのだと考えられます。
一方で欧米では、多くの世帯がこのような多額の住宅ローンを負う必要性が無いため、そもそも生活費が安く済みます。また、転職市場が発達していて人材が流動的であるため、労働者と雇用者とは契約書ありきの関係性であるため非常にフラットです。経営者が無理を要求したら労働者がNOといえる状況にあるわけです。
従って、欧米の先進国では多くの労働者は残業をせずに定時であがり、毎年1カ月単位のバカンスを取り、家族第一のスタンスでしっかりとリフレッシュしながら生産性の高い仕事を行うことができるのです(当然個人差はありますが)。
住宅寿命短命により誰が得をしているのか?
さて、それではこのような日本の労働市場環境によって誰が得をしているのでしょうか?
当然ですが、ハウスメーカーや建築業者、不動産会社はもちろんのこと、ローンを融資する銀行等の金融業者が直接的に得をします。しかし、上に記載したもっと深い「社会の仕組み」の部分を考えると、受益者たちは他にもいることがわかります。
このブラック労働社会の仕組みによる受益者たちは、企業経営者、株式投資家(資本家)、そして税収を得る国です。
つまり、支配者階級ということですね。
まとめ
住宅寿命の短さが世代を超えた資産の相続の障壁となっており、このことがブラック企業の蔓延につながっているという仮説について説明しました。
住宅寿命が短い理由については触れませんでしたが、その一端は「サラリーマンは結婚したら家を建てるもの」という洗脳的なプロパガンダにあるでしょう。
家を建てることを否定する意図は全くありませんが、みんながやっているからという、この「当たり前のように周りがやっていること」を一度疑ってみない限り、このような罠に簡単に陥ります。
まだまだ住める親族の住宅や空き家、中古住宅には見向きもせずに、大した資産もない状態で多額のローンを組むことにより新築を建てるという非常識な常識が、住宅の耐用年数とは別の角度から住宅寿命を縮めているのでしょう。このプロパガンダを誰が何のために流しているのか、正確にはわかりませんし、明記するのは控えますが、意図的に作り上げられた社会的価値観といえるものだと私は考えます。
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