2019年8月に、米国にて2年債と10年債の利回りが逆転するという大本命の「逆イールド」が発生しました。
1978年以降、米国にて過去7回の景気後退前には必ずこの逆イールドが発生していたため、リセッション発生指標として重要視されている事象が2年債と10年債の逆イールドです。
とはいえ、過去のリセッションはこの逆イールドが発生してから最短でも10カ月後、平均すると1年9カ月後に訪れているため、直近でリセッション入りするということを示すわけではありません。従って、現在はリセッション突入前の警報が鳴った段階であり、即座に資金を引き上げたりする必要はありません。
しかし、予め起こりうる事象を想定して対策を練っておくことが投資家の務めでしょう。
従って、万が一リセッションがすぐにでもやってきた場合に狼狽売りしないために、またリセッション時のバーゲンセールに買いあさりするためにも、自身のリスク許容度の確認とそれに基づく現金比率の見直しをお勧めします。
本記事では、大恐慌時の株式によるリスクと現金比率の指標について考察します。
投資におけるリスクの意味とは?
リスクと聞くと、危険なモノというイメージがありませんか?私生活で使うリスクという言葉には、日本語でいうと危険、英語でいうとdangerの意味で使われがちです。
ところが、投資でいうリスクとは数学用語の「標準偏差(σ)」のことをいいます。標準偏差をざっくりと説明すると、ある一定確率内(68.3%)で想定される振れ幅のことです。ものすごく簡単に一言で説明すると、リスクとは平均からのバラツキの範囲のことです。
出典:SMBC
上図は各アセットクラスに対するリスクとリターンを年率でまとめたものです。
例えば、国内株式の場合のリスクは19.5%、リターンは6.5%となっております。リターンとは年間での平均利回りですから、この場合は+6.5%を中心として、±19.5%(σ=19.5)の間にリターンが収まる確率が68.3%(約2/3)である、ということを表しております。
つまり、これまでの過去の実績を統計的に処理すると、国内株式の年利回りは、約2/3の確率で-13%から+26%に収まりますよ、ということです。
本ブログでもおすすめしている先進国株式は、上の図では海外株式に該当します。海外株式であれば、約2/3の確率で7.4±19.6%、つまり-12.2%から+27%に収まります。
ここまでの説明を念頭に置き、リセッション時の想定をしていきましょう。
リセッション時の想定リスク
リセッションのリスクを想定する前に、リセッションの定義についておさらいしておきます。
リセッションとは各国で定義が異なりますが、欧米では一般的にGDP(国内総生産)が2四半期連続でマイナス成長となった場合をリセッションとみなします。
つまり、リセッション入りしたと確定したときにはすでに半期以上が経過していることになります。
では、リセッションのリスクを想定しておきましょう。リーマンショックは100年に一度の大恐慌だと言われております。リセッションが10年に一度程度のペースでやってくることを考えれば、40年に一度来る最大のリスクを見込んでおけばまあよいでしょう。
40年に一度だと2.5%の確率となります。では2.5%のリスクを上の図からどうやって算出するかといいますと、ここでも標準偏差を用います。標準偏差σは68.3%(約2/3)の確率の範囲内に収まる変動幅でしたが、この二倍の範囲収まる確率は95.45%となります。そして、この標準偏差の二倍の範囲のことを2σと表します。
従って、海外株式の場合は7.4±2σの範囲に約95%の確率で収まることなり、この範囲の変動幅は-32.2%から+47%に収まります。
そして、この外側へ行く確率は5%です。ただし、プラス側とマイナス側に行く確率の合計が5%ですので、マイナス側に行く確率は半分の2.5%となり、これは40年に一度のワーストケースとなります。
ちなみに3σがカバーする範囲は99.7%となりますので、マイナス側では約666年に一度のリスク範囲となります。海外株式の場合は、3σがカバーする範囲に収まる確率は-52%から+66.8%の範囲となります。
以上から、40年に一度の通常レベルのリセッションであれば想定範囲は-1/3、リーマンショックを超える未曽有の大恐慌なら-1/2となります。
なお、本評価の注意点としてはリスクとリターンは過去の一定期間での評価結果であることと、株式は配当再投資条件であること、海外株式の指標はMSCIコクサイであること、税金や運用コストは未考慮であること、あくまで単年度での下落幅であるため年をまたいだピークからボトムまでを予測するものではないこと、そして円建てでの評価であることです。
とはいえ、配当再投資さえ徹底していれば基本的には年間1/3減少、最悪の場合でも1/2で済むという統計的事実は、一定レベルに有意な情報と言えるのではないでしょうか。
まとめ
投資におけるリスクの意味(定義)と標準偏差を用いた想定リスク範囲についてまとめました。
結論をまとめると、海外株式投資にて想定すべき資産減少範囲は以下です。
現在のご自身のポートフォリオをご確認頂き、海外株式への投資資産の内上記の金額が目減りしても狼狽しないかどうかをシミュレートしてみてください。海外株式以外のアセットクラスも、上図を用いて同様の手法でリスク範囲を簡単に算出することができます。
シミュレーションの結果、もしもメンタルが崩壊する勢いで狼狽しそうだということであれば、それはご自身の許容リスクを超えた投資をしているということになります。その場合は、リスク資産を減少させ、現金比率を増加させることをお勧めいたします。
その現金ポジションが、リセッション時には暴落による狼狽売りのリスクを低減させ、バーゲンセールで破格の投げ売り銘柄を買いあさる機会を与えてくれます。
Have a good recession!!
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