インデックス投資にて世界的に有名な出口戦略として、4%ルールというものがあります。
4%ルールとはトリニティスタディにより得られた結論であり、株式:債券=50:50で保有していれば、取り崩し開始時の運用資産の4%(インフレ調整後)ずつ取り崩しても、30年後に資産が枯渇する確率はわずか5%程度であったという米国での検証結果です。
これに倣って、生活費の25倍(=100/4)を貯めればアーリーリタイアが可能であるという認識が広く普及しております。
しかし、トリニティスタディを紐解くと、リタイア後に50年以上人生が続くことが見込まれるアーリーリタイアラーにとって4%ルールは若干危険水準であり、本ブログでは3.5%ルールでかつ株式:債券=75:25の保有割合を推奨しております。
ここ最近は世界的にも3.5%ルール、株式比率75%が主張されるようになってきており、日本で出版された海外のFIRE本にもこの数字が頻出しているため、この主張の信頼性は徐々に担保されてきております。この流れはデータを見れば必然だと思いますが、3.5%ルールを採用するにしても実はもう一つ注意点があります。
それは、取り崩し割合3.5%を手取りで考えてしまうと破産確率はグッと高まってしまうということです。
結論から言うと、手取りでは0.5%程度差し引いて考えないといけないのですが、今回はこの理由について簡単な計算も交えて説明していきます。
インデックスファンド取り崩し戦略のコストは年間0.5%を想定すべき理由
4%ルールや、本ブログの推奨値3.5%ルールを行うべき投資対象としては、普通はインデックスファンドへの投資となります。インデックスファンドには信託報酬と呼ばれる運用コストがかかります。これは、ETFであれ投資信託であれ変わりません。
S&P500に連動するVOOなどのETFであれば信託報酬は年率わずか0.03%という極限まで低い水準です。一方で、eMAXIS Slim S&P500などの国内の投資信託であれば、信託報酬は現在年率0.1%程度となります。これに隠れコストと呼ばれる諸々の手数料等を含めると、保有しているだけでかかるコストは年間約0.2%となります。
これだけ見るとVOOのようなETFの方が圧倒的にコストが少ないと思えますが、長期投資ではそうとは言えません。ETFでは、四半期に一度配当が口座に振り込まれるのですが、その際に米国での課税と国内での課税を合わせて28%もの税金が取られます。
確定申告により米国現地課税分10%の一部は取り返せるようですが、米国分の課税額を取り返したとしても、たとえば配当金が年間2%の場合は、運用資産に対して2%×20%=0.4%が日本国内で毎年課税されることになります。
一方で、eMAXIS Slim S&P500などの投資信託であれば、米国で10%課税された後にそのまま米国現地で配当再投資をしてくれるため、国内での20%課税が配当再投資時には免除されますので、配当金による税負担は運用資産額に対して年間0.2%となります。
詳細は以下の記事に譲りますが、この税の繰り延べ効果が大きいことと、管理の手間が不要ということから私は国内投資信託を採用しております。とはいえどちらでもトータルコストは対して変わりませんので好みの問題ですけどね。
ということで、ここでは国内投資信託を選択した場合の運用コストについて検討していきます。米国株式市場に連動する国内投資信託を運用する場合、以下のコストがかかります。
- 投信:運用コスト0.2%(隠れコスト込み)
- 税金:0.067%(0.20/3:1.5倍に膨らんだ標準ケース)
ここで、税金の計算については、取り崩し開始のタイミングで運用資産が元本に対して1.5倍に膨らんだというケースを想定しております。
これは、年間投資額を一定とした条件で、年率5%の運用をコンスタントに行った場合に15年後に達成できる水準ですので、FIREを目指す人にしては標準的な条件と考えられます。(ちなみに、この積立条件で総元本の二倍に膨らますためには25年かかります)
さて、本条件では、取り崩し額のうち元本が2/3、利益が1/3含まれていることとなります。元本を100とした場合の利益が50なので、元本対利益は2:1の割合となっているということですね。
取り崩し時にかかる譲渡益税は、このうちの利益に対してのみ発生します。そして、米国株式市場への投資の場合、譲渡益税率は20%です。取り崩し額全体に対する利益の割合が1/3であり、この1/3に対して20%の税率がかかるということは、取り崩し額全体(つまり利益の三倍分)に対する税率は20/3≒6.7%となります。
従って、3.5%ルールを採用する場合には、3.5%の年間取り崩し可能枠に対してまず運用コスト分が0.2%減額されて、さらにその取り崩し額に対して6.7%の税率がかかるので、以下の計算の通り残る手取り額は総資産の3%程度となります。
このことからわかる重要な結論は、4%ルールや3.5%ルールを採用するとしても、実質の手取りについては0.4~0.5%ほど割り引いて考えないといけないということです。
さらに細かいことを言うと、投資先が米国市場であるが日本で暮らす日本人の場合には、為替リスクにより幾何平均リターンが下がる分だけ取り崩し割合は割り引く必要があります。とはいえ、あんまり細かいことを言っていても仕方ないですし、手取りで3%取り崩しという水準は結構なバッファ(安全域)が積まれておりますので、そこには目を瞑っていこうと個人的には考えてます。
取り崩し割合が3%の時点で、そもそも資産運用せずとも33年間も持つ水準にあるということですからね。(インフレ無視した場合ですが)
まとめ
4%ルールなどのようなインデックスファンドの取り崩し戦略を採用する場合、実際の手取りに換算すると0.5%ほど差し引かなければならないということについて、簡単な計算も交えて説明しました。
結論としては、米国在住のアメリカンとして生きていきたい人生だったなぁということですね。あちらは非課税枠も日本よりはるかに大きいですし、長期保有キャピタルゲイン税は$38,600まで0%ですし、配当自動再投資(DRIP)を採用している証券口座も普通にありますし、投資家にとっては良いこと尽くしですね。
そもそもNISA制度のケチさと言ったらありません。ちゃんと本家英国のISA制度を見習って、少なくとも5倍ぐらいには枠を広げてほしいものです。
とはいえ、今の時代の日本人として生まれてこられただけでどんだけラッキーだと思ってるんだよという話もありますし、隣の芝は青く見えるの典型例でもありますので、歯を食いしばって与えられたカードで今後も勝負していく所存です。持ち札は「勤倹貯蓄」のみですが…
デュエルスタンバイ!!
日本株で高配当戦略を採用している人は、条件次第では配当金に対して税率はなんと5%にまで圧縮することができるというチート権が与えられております。米国連動投信取り崩し戦略では20%課税ですから、リタイア後の収入面ではデカすぎる税制優遇制度といえます。
その他、インデックス投資による出口戦略シリーズは以下です。
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